こんにちは!MOTOです!
普段は渋谷区恵比寿でパーソナルジム
STRENGTH&STRETCHの代表として働いています。
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前回の記事に引き続き、今まで出してきた投球理論を整理するために、
まずは身体の座学についてをまとめていきます。
解剖学の話をメインにしますが1から10まで説明してしまうと頭に入り切らないと思うので、特に野球の投球を理解する上で大切だと考えている3箇所に絞って解説ています。
- 第一弾 胸郭、肩甲骨周りについて
- 第二弾 野球選手の肘関節(手首の回内、回外について)
- 第三弾 股関節について
今回は「手首の回内、回外について」です。
なるべく専門用語は噛み砕いて説明していきますが難解に感じる部分もあるかもしれません。
少しでも理解しやすいように選手目線の意見も入れていき、
すぐに活かせそうな実践的な内容も盛り込んでいくので最後までついてきてください。
肘関節の筋群
「野球肘」というワードをタイトルに入れた方が興味を示す人も多かったかもしれません。
今回の記事ではYoutubeで実践的なトレーニングも解説していきますが、この記事では前野球選手に理解しておいてもらいたい解剖学を分かりやすく解説していきます。
まずは最も広く知られているであろう、
肘の曲げ伸ばしに関わる筋肉から解説してきます。
上腕二頭筋・上腕三頭筋
上腕二頭筋は肘を曲げる(屈曲)筋肉、上腕三頭筋は肘を伸ばす(伸展)筋肉です。
ただ肘の曲げ伸ばしに使う筋肉だと理解している人も多いでしょうが、
上記画像の黄色い丸の筋肉の付着点を見てもらえればわかる通り、2つの関節(肩と肘)をまたいで付着しており実際には肘の曲げ伸ばし以外の動きにも関わります。
まず、上腕二頭筋の付着点は短頭、長頭ともに肩甲骨から始まります。
肩甲骨から上腕骨には付着せず、橈骨(前腕の骨)を結ぶため
肘の曲げ伸ばしだけでなく実際には肩関節の動きにも関わることを覚えておいてください。
同じように上腕三頭筋も長頭は肩甲骨から始まるので二頭筋と同様です。
このように2つの関節をまたいで繋がる筋肉のことを「多関節筋」といいます。
上腕筋の重要性
投球との関わりについて触れると、
先ほど上腕二頭筋を屈筋群として紹介しましたが、実際には他にも腕橈骨筋、上腕筋が肘関節の屈曲に関わります。特に上腕筋は前腕の3つの全てのポジション(回外位、回内位、ニュートラル)において屈曲を行う唯一の筋です。
ちなみに二頭筋とは違い肩甲骨からではなく上腕骨から付着するため単関節の一つです。
投球においては回内位、回外位、ニュートラル全てのポジションを通過するため(下図参照)、肘の故障予防という観点では全てのポジションでの力を発揮できるようにトレーニングが必要であり、結果的に上腕筋が果たす役割はかなり大きいことが推察されます。
投球における肘関節 屈曲筋群と伸展筋群の役割
肘関節の屈筋群(上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋)
投球フォームの始まり(グラブの中に手がある状態)は曲がった状態、そしてテイクバックから腕を振りボールをリリースした後は伸長性(力を発揮しつつ伸ばされる状態)の筋収縮で腕を減速させます。肘関節の屈筋群は、投球フォームの肘の角度を適切に維持し、それらの筋力が関わる肘関節の内側側副靱帯の安定性をもたらすことが出来なければなりません。
肘関節の伸筋群(上腕三頭筋、肘筋)
腕を振るタイミングで短縮性筋活動を行なって腕を加速させますが、球速には直接関与しないとは言われています。ただし、肘関節の伸筋群には腕を振るさいに肘にかかる外反ストレスを減らす役割があるためトレーニング含め非常に重要です。
特に上腕三頭筋の外側頭は投球フォームの中でも特に高度な運動力学的要素を含むMERにおいて、肘関節の安定筋として働くためトレーニングにおいても優位に働くエクササイズを入れておきたいところです。
腕の筋肉は障害予防の観点から非常に重要な役割を果たします。
外反ストレス(肘が頭方向に反る状態)による
肘関節の内側側副靱帯の損傷の予防として、
上腕の筋肉の強化によりある程度故障を予防することができます。
ここまでは肘関節の解説でしたが、もう一つ関節の説明を加えてから具体的なトレーニングについても紹介していきます。
橈尺関節の筋群
少し触れましたが、投球動作と肘の関節を語る上でもう一つ大事な動きが回内と回外動作です。
手首の向きを変える関節で、
覚えやすいように「カーブ」「スライダー」を投げる時の角度が回外、
「シュート」「シンカー」を投げる時の向きが回内だと覚えてください。
※理解しやすくする例えとして出してるだけなので、「腕を振るさいは最後全部回内だ!」「俺のスライダーは…」みたいな類のツッコミはご勘弁願います。
この回内、回外動作を行う関節のことを「橈尺関節」と言います。
回内には円回内筋と方形回内筋が
回外には回外筋と上腕二頭筋が関わります。
(肘の屈筋で出てきた腕橈骨筋は回外位、回内位からニュートラル位に戻すのを手伝います)
野球肘の始まりと肘のケア
特に円回内筋は肘の内側に付着するため、肘関節内側側副靱帯の損傷予防と動作の安定性に大きな役割を果たします。肘の靭帯の損傷は先に前腕の回内筋群に疲労が溜まることから始まり、柔軟性、筋力の低下から始まることが多く特にケアが必要です。
先日、BCリーグ、信濃グランセローズの吉岡豊司選手をYoutubeのゲストに迎えて身体のケアのインタビューをした際は自然と前腕のケアの話になりました。
またYoutubeで肘のセルフケアについて紹介したさいはこの円回内筋を特にピックアップしました。
橈尺関節の可動域は投球において、リリースポイント時点のボールを離す手の角度に影響を及ぼすと考えられ障害予防だけでなくコントロールにも重要な部分です。逆に言えば、前腕に疲労を感じてる時に変化球が曲がらなくなったり、いつもより曲がったり、制球が効かなくなってきた時は身体からの黄色信号なので注意してください。
野球肘の予防としてアイシングを直接患部に当てて対応しようとする選手が現場では多いですが、実際には上記内容を知識としていれたうえで対処療法でなく根本から対応するべきです。
解剖学についての話は以上にして、トレーニングについて紹介していきます。
(すでに野球肘を発症しているという選手はまずはスポーツ整形外科など専門機関に行くことを推奨しています)
野球肘予防のためのトレーニング
改めてここまでの座学の話を踏まえて、トレーニングで留意すべき点を箇条書きにまとめます。
肘関節屈曲筋群(上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋)
- 前腕の3つのポジション全てで筋発揮できるような内容を盛り込む
- 投球腕を減速させる役割も担うため、伸張性収縮を強調したトレーニングも行う
肘関節伸展筋群(上腕三頭筋)
- 屈曲筋群と同じく様々な前腕位置で素早い加速と筋量を強化することが望ましい
- 特にMERで安定筋として働く三頭筋の外側頭を優位に働かせるエクササイズが重要
上腕二頭筋、上腕三頭筋はともに肩関節、肘関節の2つの関節に関わる多関節筋であるため、肩関節のポジションを考慮して拘縮等に繋がらないように関節可動域を大きく使うエクササイズも組み込むべき。
Youtubeにトレーニング実践編の動画を出しましたが、個別の動画も貼っておきます。
ハンマーカール(上腕筋)
ニュートラルグリップとなり、通常のアームカールと比較して
上腕二頭筋の外側頭、上腕筋、腕橈骨筋への刺激として有効
リバースカール(腕橈骨筋、上腕筋、前腕の筋群)
プロネイティッドグリップ(逆手)で行うカール
肘関節の屈曲と橈尺関節の回内エクササイズ
上腕筋と回内筋群を強化する
アームカール エキセントリック強調ver.(屈曲筋群)
上腕二頭筋の強化するトレーニングとして超王道
ここでは肘の障害予防を狙いとするため、下ろす局面を強調して行う
オーバーヘッド・ダンベルエクステンション(上腕三頭筋)
また、頭上にダンベルを持つポジションによって、
二関節筋である三頭筋の長頭は伸張され可動域を目一杯使いやすくなる
説明したMERの安定筋としての役割を持つ上腕三頭筋の外側頭を特に強化する
ライイング・ダンベルエクステンションwithプロネーション(伸展筋群、回内筋群)
上腕三頭筋および橈尺関節の回内筋群を強化する種目
投手向けの技能特異的エクササイズ
プロネーション/スピネーション(回内、回外筋群)
回内と回外動作の両方を行うことで橈尺関節に関わる筋肉を強化する
主働筋と拮抗筋の相反性神経支配を利用して可動域の維持も狙う目的
是非これらの内容をトレーニングプログラムに組み込んでみてください。
重量の設定はレベル、年齢、性別によってかなり変わるため正直見ないと分からないですが、
これからトレーニングを始める健康な男子高校生と仮定して初期重量の目安を書いておきます。
※無駄な反動なしで可動域いっぱい十分に扱える場合は重さを上げていきましょう
回数は可動域を意識するトレーニングなら12~20rep程度
リバースカール➡︎バーベル10kg ダンベルなら5kgずつ
プロネーション/スピネーション➡︎2kg以下のダンベル、バット、トンカチなど利用
重さをある程度かけられる種目は8~12rep程度を目安にしてみてください
ハンマーカール➡︎バーベル10kg ダンベル5kgずつ
アームカール➡︎バーベル10kg、ダンベル5kgずつ
オーバーヘッドダンベルエクステンション➡︎ダンベル10kg
ライイング・ダンベルエクステンションwithプロネーション(※)7kgずつ
※最初2kgくらいで動作を練習
行うタイミングですが、これもレベルや環境によっても変わります。
ひとまず今行っているトレーニングに”追加で”行なってみてください。
やってみてオーバーワークと感じるなら、そこから調整してもらえれば。
なるべく多くの選手のニーズに当てはまるトレーニングをピックアップしたつもりなので、実際にやってみて体にどういう反応が出るのか、日々の練習との兼ね合いの中で回復が間に合うのかを試してみてください。
ちなみにこの内容は他の全身トレーニングも行うことを前提としています。
私自身が普段どんなトレーニングに取り組んでいるのか、何を大事にしているのかは先日Youtubeでも語ったばかりなので、よかったらこちらも参考にしてみてください⬇︎
まとめ
- 上腕二頭筋、三頭筋は肘の曲げ伸ばし以外の動きにも関わる多関節筋
- 肘屈筋群は腕の減速に関わり、特に全てのポジション(回内位ほか)で上腕筋の役割は重要となる
- 肘伸展筋群は外反ストレスの軽減に寄与し、特に上腕三頭筋外側頭はMERの安定に重要
- 肘の故障は前腕の疲労から来ることが多いため、ケアが重要となる(動画参照ください)
- 肘関節強化のためのトレーニング紹介
さて、今回の記事は以上です。
初めて知る内容だったという方は何回でもこの記事を読んで、是非頭に入れてください。
普段から勉強をされている選手、指導者にとっては目新しい内容ではなかったかもしれませんが頭の整理に役立てば幸いです。
たまに「どうやって勉強してますか?」と聞かれるのでオススメの本をリンクで貼っておきます。
身体の知識はその私が10代の頃に最初に買ったのが「肉単」という本ですが、これから身体の勉強をしていきたいという人にはお勧めします。
ある程度知識があって、より身体への理解を深めたいという人にはカパンジーが非常にお勧めです。
ただ、やや難解な専門書なので初めて勉強するという人には⬆︎の方がお勧めになります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
では、また!