#24使える筋肉と使えない筋肉|ただ王道あるのみ

フィットネスの知識

はじめまして、パーソナルトレーナーのMOTO(モト)です。

今回は「スポーツと筋トレについて」何処よりもわかりやすく、丁寧に、初心者の方でも問題ないように解説します。

私は現在、東京の恵比寿でパーソナルジムを経営しつつ、軟式野球に取り組みスポーツと筋トレを結びつけながら活動しています。今回は体のプロしての視点から、スポーツと筋トレについての関わりについての話をしていきます。

軽く自己紹介
MOTO(モト)/30代
東京都渋谷区恵比寿にてパーソナルサロン、

STRENGTH&STRETCHを経営
SNSのフォロワー合計1万5千人超え
Youtube X(Twitter) Instagram ブログ中心に
情報発信中
トレーナー活動はゴールドジムから始まり現在10年目
Dr.ストレッチに2年間在籍した経験を活かしボディケアも行う

前回の記事で紹介しましたがウェイトトレーニングは複数の関節を同時に動かすような種目を中心に置いた方が良いという話をしました。理由はシンプルにその方が筋力も伸びやすいし、全身の筋肉のつき方のバランスも良くなるからです。
(前回の記事:#23【初心者向け】本気で強くなりたい人以外読むの禁止|トレーナーが徹底解説)

筋力は筋肉のサイズに依存するので、トレーニングは基本的には身体を大きくすることになります。
筋肥大について語るときに、「ウェイトトレーニングで作った筋肉はスポーツで鍛えられた筋肉と違うから使えない」と言われることがあります。

本当にそうなのでしょうか?

ウェイトトレーニングの目的を先に整理しておきましょう。
ボディメイクの大会の場合は「筋肉を大きくする」が目的になります。
野球などの競技力に活かしたい場合は「強くなること」が目的となります。

力の大きさは筋サイズに比例するのでウェイトトレーニングをすると体は大きくなりますが、競技力のためにウェイトトレーニングを行うのであれば副次効果に過ぎません。
競技力向上のためであれば強くなったついでに大きくなってるだけであり、ボディビルやフィジークなどのボディメイクであれば太くなるついでに強くなってると言えます。

スポーツの競技力を伸ばすのはその競技自体のスキル練習が最も重要です。
スポーツを始めてすぐの頃は動作に慣れておらず、スキル練習を通じて結果的に筋力、筋肉量、心肺機能を伸ばせる場合がありますが、それが出来るのは体力レベルが低い場合に限られます。

体力レベルが高くてもスキル練習で高い負荷を掛けられれば、体力も伸びることもあるかもしれませんが、理想的な身体の動きを維持することが難しければ質の高いスキル練習とはならないかもしれません。

競技力に大事になるのはRFD(瞬発力)

ウェイトトレーニングを行うと筋肥大し、筋力や筋パワーが伸びます。
先ほど説明した通りボディメイク的なトレーニングはこのうちの筋肥大にフォーカスします。

ですが、アスリートの身体作りも土台となる筋肉量が十分でないと、高い筋力や筋パワーは出ません。これに加えてスポーツ競技の場合は筋力を動作を行う短い時間で行える必要があります。一般的には瞬発力と呼ばれますが、これをRFD(力の立ち上がり率)と専門用語では呼びます。ようするにスクワットがゆっくり粘って粘って200kg挙がろうが瞬発的にドンッと力を発揮できないなら競技に活かせないかもしれないということです。

実際には十分な筋肉量を獲得し、筋力を伸ばすこと自体を目的とした場合もRFDが高まることが多く、競技にポジティブな影響を与えることは多いです。ですが、筋肥大と共にずっとRFDは高まるわけではなく、RFD向上に向いてる方法を行わないとどこかで効果は頭打ちになります。

競技に筋力を活かしたければRFD、瞬発的に力を発揮する能力が必要ですが
これにはクイックリフトと呼ばれるクリーンやスナッチといった種目が有効です。

しかし、例えばYoutubeのフィジーカーやボディビルダーを見てほしいのですが、クイックリフトを行なっている選手はほぼ見当たりません。彼らは身体の「外見」を競う競技なので、どういう力の発揮ができるかは重要ではないからです。

勘違いしないで欲しいのは私はボディメイク的なトレーニングを否定はしていません。
否定しているのは目的の違いを理解せずに行なってしまう場合に限ります。

使える筋肉と使えない筋肉という表現は、そもそも何をもってして使えると表現するのでしょうか?
何となくスポーツ競技に活かせていれば使えている、筋肉質なのにスポーツ競技に活かせていないなら使えない筋肉という意味なのでしょう。では、野球の上手い選手に水泳やバスケをやらせたらどうなるでしょうか。お察しの通り、使える筋肉とされる身体を持っていたとしても練習をしなければ上手くはできないはずです。大谷翔平選手が全てのスポーツで今すぐに活躍出来る訳ではないということです。

ウェイトトレーニングは競技力の可能性を伸ばす

私は長年野球の世界にいますが、野球界には今でも「筋トレはしない派」が多数います。

要因は「筋トレをすると動きが硬くなる」という間違えたイメージを持つ人と、実際にウェイトトレーニングに励んで成績を落としたり、怪我をした選手がいるからです。たしかに自己流で間違った方法で取り組んでしまうとそうなる可能性もあり、特に最初は専門家…できればトレーナーの中でもストレングスに強い人(S&Cコーチ)に指導を仰ぐべきです。

実際にNPBからMLBへ行った選手を思い出してください。
大谷翔平選手、ダルビッシュ有選手、吉田正尚選手、鈴木誠也選手、菊池雄星選手などウェイトトレーニングを行なっていない選手の方が少ないのは明らかです。

ウェイトトレーニングの最大のメリットは体力要素を底上げできることです。
例えば、BIG3の合計値が300kgの選手と500kgを超える選手がいたとして、スキルが同レベルならどちらの方が打球を遠くに飛ばせるでしょうか?

考えるまでもなく後者のはずです。

大谷翔平選手がヘックスバーのデッドリフトで260kgを挙げる動画が話題になっていました。
実感としても飛ばせる選手、投げるボールの速い選手は筋力やバネはとても強いです。

良くも悪くも野球に限らずスポーツ競技はスキル要素が重要なことは認めます。
しかし、結局トップ選手はどちらも兼ね備えていることがほとんでどです。

同じ技術なら体力要素が高い方、フィジカルの強い選手の方がボールを遠くに飛ばせるし、速い球を投げられるし、高い走速度を出せるはずです。逆にフィジカルがなければ、それが競技力を伸ばすボトルネックになるため早い段階からウェイトトレーニングに取り組むべきと私は考えています。

ウェイトトレーニングを体力要素の底上げに利用するなら、それにフォーカスすべきでここに競技に似せた動作などは混ぜるべきではありません。変に動きを寄せれば教科書通りのフォームからは重量が落ちます。そうなるとせっかくの筋肥大効果や筋力向上効果を出すための刺激にノイズが混ざり、十分な効果を引き出せなくなることは明白です。


ウェイトトレーニングの効果を引き出すためには

ウェイトトレーニングに競技に似せた動きを混ぜるべきではないと言う話をしましたが、これは「体力要素向上」のためのトレーニングは教科書重視でいくべきと言う話です。

この記事を読む人のトレーニングレベルはさまざまでしょうが、ほとんどの人はまだBIG3(スクワット、デッドリフト、ベンチプレス)の合計値が400kg超えてない選手が多いでしょう。何もBIG3に固執することはありませんが扱える重量、身体の強さは行える技術を増やし選手の可能性を大きくすることができます。

中でもBIG3含む複数の関節を一緒に複雑に動かすトレーニング種目(コンパウンド種目)は動作を効率よく行うための能力を上げることができます。ウェイトトレーニングのベーシックな種目で扱える重量を伸ばしていくことを求めると、身体の使い方も良くなることが多いということです。

この身体の使い方が良くなることも副次効果であり、メインの目的は身体を強くすること「体力要素向上」が主目的であることは忘れないでください。

筋トレ偏重し過ぎもよくない理由

ここからは選手目線の話ですが、ウェイトトレーニングで結果が伴うと今度は偏重してしまう場合があります。Diminishing retuens(収穫逓減)といって、ウェイトトレーニングを取り入れてパフォーマンスが上がる時期があったとしても、スキルが不十分であれば伸びは延々とはなりません。

ウェイトトレーニングは競技力の可能性を伸ばすと表現しましたが、イメージとしては車のエンジンを大きくするイメージです。エンジンが普通自動車からF1カーに変わったなら、運転技術もそれに合わせて向上させなければパフォーマンスには繋がりません。

つまり、いまの自分の身体と、その身体に合ったテクニックを絶えず模索し続ける繊細なスキル練習が必要です。スキル練習はそれだけ奥が深いものなので、練習に体力を伸ばすなんてことを求めるのではなく、動作に集中するべきだということです。
トレーニングで筋力・筋肉量が伸びれば、それだけ体力に余裕ができるので、良い練習をする土台ができます。良い練習を積み重ねられる体力ができるだけでもトレーニングの効果があったと言えるのだと思います。

ちょっと矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、癖づけたい動作がある時にダンベルやバーベルといった器具を使って負荷をかけながら行うのはありだと考えています。ただし、これはトレーニングではなくスキル練習だと分類しましょう。

今の身体の状態とそれに合ったテクニックを常に模索する練習は競技力に不可欠です。
スキルというのは非常に繊細であり、向上させるためには動作に全集中するべきです。

トレーニングによって筋量、筋力が伸びれば体力に余裕ができ、良い練習をする土台となります。

難しいなと感じるのは選手のパフォーマンスに課題がある時、その課題が「フィジカル」の問題なのか「スキル」の問題なのかが微妙な時です。トレーニングの知識と競技スキルの知識の両方が必要となりますが、大抵の場合は「フィジカル」の問題である場合が多いなと個人的には感じています。

まとめ

  • 使える使えないは目的によって違うからそこから整理すべし
  • 競技力のためなら筋肥大だけでなく、RFD(≒瞬発力)を向上させるべし
  • 体力要素(最大筋力等)を伸ばすと競技力の可能性が広げることができる
  • 体力要素向上の効果を引き出すために、スキル練習要素は混ぜるべきではない
  • トレーニングをむやみにするだけでなく、スキル練習も大事にすべし

狙ったわけではありませんが、この記事の内容を考えてる間に大阪桐蔭野球部のトレーニング動画がSNS上で話題となっていました。胸骨に思い切りバウンドさせるケツ上げのベンチプレスだったのでやり方に批判がありましたが、それよりもセーフティバーを使っていないことに目が行きました。

ケツ上げベンチは良くないイメージがあるかもしれませんが、出力の仕方を考えると背中でベンチを捉えつつプッシュする意識づけとするなら悪くありません。2年半というごく短い期間で結果を求められるこの野球部では、正しいベンチプレスを習得するより大事な技術なのかもしれません。
(もちろんこのフォームのままだと効果が低いレベルで頭打ちになるのでオススメはしてません)

それよりも普段からこのフォームが常習化していて、複数人ではなく一人でベンチプレスを行うこともあるとしたら重大な事故に繋がる可能性があるので怖いです。もしかすると、本当はセーフティを使うとかチーティングなしのフォームも指導されているかもしれませんが、動画を見た限りは安全面が十分に配慮されているようには見えませんでした。

大阪桐蔭の野球部は言うまでもなく「野球は上手い&強い」です。だからこそ安全面に問題がありそうな映像を目にした時に、残念だなと感じてしまいました。

トレーニングに取り組むにしても皆さん裏技を求めすぎる傾向にあります。
SNSでは奇抜なトレーニングの方が伸びやすいですが、スクワットやベンチプレスなどベーシックな種目をやり込む方がスポーツに限った話だけでなく日常動作においても恩恵が大きかったりします。

私自身、いろいろな工夫をしてスポーツに取り組んできましたが、結局ウェイトトレーニングに関しては裏技を求めるよりも教科書通り王道な方法で行う方が逆に効果的だなと実感しています。

今回の記事を通してあなたのスポーツとトレーニングの関係性についての考えの参考になったら嬉しいです。気に入ってもらえたらブックマークとSNSでの引用もして頂けたら嬉しいです。

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最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。

では、また!

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