#18_「胸郭、肩甲骨周りについて」野球選手なら知っておきたい身体の知識 第1弾

野球

こんにちは!MOTOです!

普段は渋谷区恵比寿でパーソナルジム
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2023年はYoutube含めて今まで出してきた情報を整理するために、もう一度私の投球理論をまとめ直していきます。

今回から3回の記事に分けて「野球選手なら知っておきたい身体の知識」を書いていきます。

解剖学の話をメインにしますが1から10まで説明してしまうと頭に入り切らないと思うので、特に野球の投球を理解する上で大切だと考えている3箇所に絞って解説します。

今回は「胸郭、肩甲骨周りについて」です。

なるべく専門用語は噛み砕いて説明していきますが難解に感じる部分もあるかもしれません。

少しでも理解しやすいように選手目線の意見も入れていき、すぐに活かせそうな実践的な内容も盛り込んでいくので最後までついてきてください。

胸郭、肩甲骨周りについて

まず最初に触れたいのが「肩のインナーマッスルとはなんぞや」という話。

多くの選手が肩周りにインナーマッスルが大事という話は聞いたことがあり、ゴムチューブなどを使って鍛えている選手も非常に多いと思います。

なんとなく肩の怪我予防のためという話をコーチや先輩に聞いて行っているでしょうが、その正確な意味について、インナーマッスルについて理解できているでしょうか。

Google画像検索より引用:ローテーターカフ

基本的に肩のインナーマッスルと呼ばれるのは「ローテーター・カフ」のことです。
この筋肉の役割を一言で説明すると、肩から骨頭がズレないように引っ張って支えることです。


役割をイメージしてもらうために肩関節の外転(横から上に腕を持ち上げる動き)を例にしてみます。

引用 Google画像検索:肩 外転

矢印に注目してほしいのですが、腕の骨だけでなく肩甲骨の向きも変わっていきます。

この腕の上がる動きは肩関節のみ(腕の骨が上がる動き)で行われるわけではなく、
肩甲骨も一緒に動く(外転なら肩甲骨は上方回旋)ことによって成立します。

肩の始まりは肩関節の部分ではなく、前面は鎖骨から後面は肩甲骨からです。
ちなみにこれは4年前に初めてあげたYoutubeで解説した内容です。

腕の骨自体が動く肩関節の動きは全体の2/3
肩甲骨の動きは全体の1/3貢献してこの動作は成立ますが、
これを少し難しい言葉だと「肩甲上腕リズム」と呼んだりします。

ローテーター・カフはこの肩甲骨と腕の骨がズレないようにサポートする機能を担っています。
(肩甲骨自体を動かす筋肉は他にも沢山あります)

分かりやすくするために投球フォームの話と絡めて説明します。
肩関節の外転と関連が深いのは投手の動作はテイクバックの動きですね。

引用 google画像検索:投手(phontoで編集)

この部分で選手によっては肩関節に痛みが走る選手もいますが、その場合上記の肩甲上腕リズム…
肩関節の動きを成り立たせる筋群の連動性・協調性が狂っている場合があります。

インピンジメント症候群と呼ばれる、骨の衝突や腱の擦れ、炎症にによって痛みが走る場合も肩周りの細かい筋肉の機能不全が問題になっている場合が非常に多いです。

この肩関節の外転を例にざっくりと肩のインナーマッスルの役割を理解するために、
肩関節の外転に関わる筋肉をわかりやすく3つの役割に分けて考えていきます。

1.上腕骨(腕の骨)をメインで持ち上げる筋肉…三角筋

2.上腕骨の骨頭を肩のあるべき位置に上から固定する筋肉…棘上筋

3.上腕骨の骨頭を肩のあるべき位置に下から引っ張って固定する筋肉…棘下筋、小円筋、肩甲下筋

三角筋と棘上筋はどちらも上腕骨を上に上げる筋肉ですが、三角筋は最も強力な腕を上げる主働筋、棘上筋も腕の筋肉を上げる機能と骨頭を固定する役割があると思ってください。

三角筋と棘上筋はあくまで上腕骨を上方向に持っていく筋肉なので、骨頭がずれないように下に引っ張る役割の筋肉が必要です。

それが棘上筋以外のローテーター・カフ(小円筋、棘下筋、肩甲下筋)です。
ローテーター・カフはもちろんこの下に引っ張る以外の役割もありますが、今回は上腕骨の骨頭がずれないように支える役割があるということを覚えられればOKです。

棘上筋:肩関節の外転
棘上筋:肩関節の外旋
小円筋:肩関節の外旋
肩甲下筋:肩関節の内旋

⬆︎こんなふうに専門書とか読むと書いてあったりしますが、言葉をここまで覚える必要はないです。
筋肉の作用は骨のどこからどこに付着しているかで決まるので、体への理解を深めたければ、言葉で覚えるより図で見てイメージを頭に刷り込んだ方が効果的です。

肩甲骨と腕の骨がズレないように支えるのがローテーター・カフの役割で上から横に引っ張ってるのが棘上筋、下方向に向かって引っ張ってるのが棘下筋、小円筋、肩甲下筋です。

イメージはテントを張る時のように複数の箇所から引っ張る感じです。

繰り返しになりますが、もう一度おさらいです⬇︎

上腕骨(腕)を主に動かす筋肉(アウターマッスル)
三角筋

上腕骨の骨頭を固定する筋肉(インナーマッスル)
棘上筋

上腕骨を下から引っ張って固定する筋肉(インナーマッスル)
肩甲下筋、棘下筋、小円筋

インナーマッスルとか深層筋といった言葉は一人歩きし過ぎているというのが個人的な感想です。
強調して伝えたいのが、「インナーのトレーニングは善、アウターのトレーニングは悪」という認識はそもそも機能として同じくらい重要なので間違えていています。
肩の外転動作を例に挙げましたが、肩の動きは多くの筋肉が連動して協調して動きます。

視覚的に分かりやすいように画像を添付しましたが、筋肉の付着部分によって力が発揮される方向が決まりますし、それぞれの役割を果たすことによって肩のスムーズな動きが成り立ちます。

一時期、肩のインナーマッスルのトレーニングとして「キューバンプレス」が一部のインフルエンサー達が発信した影響か流行っている時期がありましたが、このトレーニングは肩の外旋筋群にとくに刺激を与えるトレーニングです。(個人の感想かもですが一時期やっている人をよく見かけたので…)

ローテーター・カフは4つの筋肉の総称ですが、このうち外旋に関わるのは3種類の筋肉。
4種類のうちの3種類に刺激が入ると聞くと、たしかに流行るのも頷けると思います。
(実際にいいトレーニングだと思いますが、それだけをやってるなら不十分です)

トレーニングもやる意味が理解できるとモチベーションもキープしやすいかと思います。
ざっくりと今回は肩の動きはメインで骨を動かす部分(外転なら三角筋)と骨頭を安定させる役割のある筋肉(ローテーター・カフ)があるということだけ覚えてください。

ちなみにここから個人的意見にはなりますが、
チューブなどの肩のインナートレーニングを別個でやるのは刺激を与えるという意味で毎日行いつつ、オーバーヘッドプレスやプレスやリアレイズなどいわゆるアウターを鍛えるようなトレーニングも計画的に行うべきと考えています。

私自身がよく行っているのはオーバーヘッドプレス(ミリタリープレス)、アーノルドプレス、サイドレイズ、リアレイズ、キューバンプレス、チューブトレ各種(1st,2nd,3rdポジション外旋・内旋)です。

特にオーバーヘッドプレス」はアウターだけでなく、上げ切ったポジションでローテーター・カフにもしっかり刺激が入る種目なので特にお勧めのトレーニングです。

ちなみに肩甲骨は今回説明した筋肉含め17種類もの筋肉が付着する部分です。

それらが連動して肩関節の非常に広い可動域が実現できているわけで、「これだけをやればし怪我予防になる」というような内容はないと考えてしっかり普段から色んなトレーニングを行なってください。

胸椎の動きについて

続いては胸椎についても触れておきましょう。

山本由伸選手が「由伸体操」に取り組んでいる様子がメディアで流されてから、ブリッジがインナーマッスルと同様に「しなり」が手に入れられそうだというイメージが先行で流行したように思います。

鎌田一生ベースボール&トレーニングTVより

確かにブリッジで求められる可動域が投球においても重要なことは否定しませんが、これもやはり闇雲に行うのではなく目的を意識する必要があります。

まず、説明しようと思うのは「ジョイントバイジョイントセオリー」について

引用 Google画像検索:ジョイントバイジョイントセオリー

関節には動くべき関節と固定すべき関節があります。

ここでピックアップしたいのは
胸椎(胸の背骨)は動かすべき関節
腰椎(腰の背骨)は固定すべき関節
であるということを頭に入れておいてください。

山本由伸選手本人がどのような目的でこの内容に取り組んでいるのかは分からないですが、柔軟性の向上自体は恐らく副次効果で、思った通りに体を操るための身体操作の内容だと私は解釈しています。

ブリッジに取り組んでいる選手の中でむやみやたらにアーチの高さを出すことを目指して取り組んでいる選手がいますが、基本的に胸椎を大きく動かすことと腰椎の固定はセットです。

胸椎の柔軟性が投球と深く関わるのはMER、あるいはTERと呼ばれるフェーズです。

投球動作の肩最大外旋角度に対する肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節および胸椎の貢献度

イラストは上記文献の数字を参考にしたものですが、この論文ではMERは

肩甲上腕関節107度(いわゆる肩関節)
肩甲骨後傾23度
胸椎伸展10度

とされています。

ブリッジではこの胸椎伸展の可動域の向上を狙うと理解しておいてください。
胸椎の可動域が低い状態で投球を続けると、腰椎が代償して腰を痛める選手が多いです。

ブリッジでは腰まで反るイメージは捨て、胸肩付近で動きを出すことを大事に

自身の選手目線が混ざりますが、特に短期間の投球数の増加では可動域の低下の影響か腰への負担が増します。私も学生時代の長期休暇中の合宿などで腰の部分に疲労が溜まっていくのを感じたことを覚えています。

こう聞くと、ブリッジに日々取り組むのは悪いことではないように思えますが、ただアーチを高くするためのブリッジに取り組んでしまうと逆効果になる可能性もあります。体が硬いのにブリッジを無理やり行うと胸椎ではなく腰椎で反ろうとしてしまいます。

ピッチングは自動化されたブログラムで動くものなので、普段から腰ごと反るような動きをインプットしてしまうと、投球時にも腰ごと反るようになりかねません。

可動域のチェックとしてブリッジを行うことには賛成ですが、目的重視で行くなら下の図のように胸椎の可動域だけを狙ったエクササイズの方が適していると考えます。

地面に胸が着く程度が目標

ちなみに背骨の回旋の動きに関しても胸椎の可動域は重要です。
今回は伸展の動きをピックアップしたかったので詳しい説明は省きますが、腰椎は左右それぞれに5度ずつ程度しか回らないです。

なので、野球において「腰を回す」というのはあくまでイメージの話であり、実際には上半身で回旋に大きく貢献するのは胸椎であり、股関節であれば内旋という動きです。

股関節の回でも詳しく解説するので楽しみにしていてください。

可動域があっても「しなり」が出るとは限らない

少々、元も子もない話に聞こえるかもしれませんがどんなにブリッジで可動域を出せるようになったとしても、それが「しなり」に直結するとは限らないというのが実際です。

投球における「しなり」とは下半身の踏込動作を上手く利用して回旋運動へと切り替わり、上半身と下半身の捻転差によって生まれ、投球腕側の肩に前方へ進む力がかかることによって作り出されます。

実際に体が硬くても「しなり」を出せる選手をあなたも見たことがあるのではないでしょうか?
逆にブリッジで素晴らしいアーチを作れるのに「しなり」が出ない選手も沢山いるでしょう。

ピッチングにおいて筋力や可動域は料理で言うところの材料に過ぎません。
そして、材料があるからと言って、正しく調理されなければ料理は完成しません。

今回のシリーズはあくまで解剖学的な話に焦点を当てたいので、フォームの話は過去にYoutubeで解説したこちらの動画を参考にしてください。

まとめ

  1. ローテータ・カフは上腕骨の位置がズレないように支えている
  2. これが最強というような怪我予防の肩トレなど存在しない
  3. 関節には固定すべき部分と動かすべき部分にある程度の決まりがある
  4. ブリッジでアーチをむやみに求めるより胸椎伸展可動域を重視すべし
  5. 「しなり」はフォームの技術の要素が絡むため可動域だけで決まらない

さて、今回の記事は以上となります。

初めて知る内容だったという方は何回でもこの記事を読んで、是非頭に入れてください。
普段から勉強をされている選手、指導者にとっては目新しい内容ではなかったかもしれませんが頭の整理に役立てば幸いです。

たまに「どうやって勉強してますか?」と聞かれますが、まず大学がそもそも体育大でしたし授業もそういった内容がありました。今も色んな動画を見たり、人から聞いて学ぶことも多いです。

ただ、今も昔も私は文章から学ぶことが多いです。
論文も読むし、専門書も読むし、本屋に売ってるようなものもよく読みます。

今回のような話は「機能解剖学」という分野になりますが、せっかくのなのでいくつかお勧めを紹介しておきましょう。

身体の知識はその分野の学校に行ってないとなかなか触れる機会が少なく、勉強もどこから行なっていいのか分からないかもしれません。私が10代の頃に最初に買ったのが「肉単」という本ですが、これから身体の勉強をしていきたいという人にはお勧めします。

ある程度知識があって、より身体への理解を深めたいという人にはカパンジーが非常にお勧めです。
ただ、やや難解な専門書なので初めて勉強するという人には⬆︎の方がお勧めになります。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

では、また!

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