はじめまして、パーソナルトレーナーのMOTO(モト)です。
今回は
「速い球を投げるためのフォームのポイント」
について私なりの見解を話してみようと思います。
私は学生時代はよくいるレベルの控え選手で球速も130km/h前後でしたが、諦め悪く社会人になってからもトレーニングと練習を続けて球速140km/hを超えるようになりました。速い球を投げる野球選手がここ10年で本当に増えましたが、正しいトレーニング方法やフォームについての理解が出来れば今の時代は誰でも少なくとも140kmhは超えられると感じています。
とはいえ、「その正しい情報をキャッチするのが難しいんだよ!」というツッコミが聞こえてきている気がするので、今回は「投球フォーム」にフォーカスして、どうしたら速い球を投げられるかの肝の部分を紹介します。
対面での投球フォーム指導も運営しているジムで行えるので興味ある人は自己紹介からジムのHPも覗いてみてください。
軽く自己紹介
MOTO(モト)/30代
東京都渋谷区恵比寿にてパーソナルサロン、
STRENGTH&STRETCHを経営
SNSのフォロワー合計1万5千人超え
Youtube X(Twitter) Instagram ブログ中心に情報発信中
トレーナー活動はゴールドジムから始まり現在10年目
Dr.ストレッチに2年間在籍した経験を活かしボディケアも行う
球速は何で決まるか?
そもそも球速が何で決まるのかといえば、フィジカル×メカニクスということができます。
もっと端的に言えば、【体の強さ】×【投球フォーム】です。
まずはシンプルな理屈を言えば投球の速度はどれだけ体の動作を利用してボールに力を加えることができるかの【力積】が大切です。
力積とは「力×時間」です。
そしてさらに言い換えると
球速=身体重心の移動距離×速度
によって球速は高められます。
まずはこれを覚えておいてください。
投球フォームの話とは少々逸れますが、腕が長いことは球速を出すためには有利となります。同じフォームで投げる場合は腕が長いだけで、移動距離を稼ぐことになるからです。160kmオーバーを投げる日本人選手は現在、大谷翔平選手、佐々木朗希選手、千賀滉大選手、藤浪晋太郎選手、平良海馬選手、杉山一樹選手、甲斐野央選手、山崎颯一郎選手、山下舜平太選手と平良選手(173cm)を除いて全員が身長185cm以上の体格を持っています。
ですが、体格についてのそんな元も子もない話をしても仕方ないので、全員に共通で意識できる投球フォームの理屈の部分を解説していきます。
最も大事なのは並進運動
投球フォームは前半の並進運動と後半の回旋運動に分けることができます。
並進運動の役割は身体重心を投球方向へ移動をすることによって、大きな推進力を作ることです。
身体というのは手足を除いた胴体が重さのおよそ7割あるので、大きな推進力を獲得したければいかに胴体を真っ直ぐに投球方向へ運ぶかが鍵となります。
プロ選手とアマチュア選手を比べた場合、最も差が大きいのが並進運動の速度と軸足の傾きの作り方です。プロ選手は横向きのまま体を並進する能力に長けているため、並進運動の姿勢は空中で開脚をしているような形となります。
なぜ横向きをキープすることが大切になるかというと、軸足(右足)で地面を押すことによって投球方向(前方)に推進する力を得るためです。
先ほど球速は身体重心の移動距離×速度によって決まると書きましたが、身体重心を前方に運ぶのと同時に踏込脚を着地した後の投球腕の加速距離も重要となります。横向きをキープしたまま並進運動を行うことで、踏込脚着地後の回転時の加速距離を取ることができるので、並進運動の技術はとても大事です。
横向きをキープできずに着地をしてしまうと、投球腕の充分な加速距離が確保できません。また、空中で開脚のような姿勢を取れるのは軸足で地面を押し続けられているからであり、作用反作用の法則によってより大きな地面反力を獲得することができます。
並進運動のタイプ分け
繰り返しになりますが並進運動は体を横向きのまま、重心(胴体)を前に運ぶことが重要です。次にその並進運動のタイプ分けの話について…
究極に正しい投げ方があって全員がその投げ方を身につければ良い、というほど投球は単純な動作ではありません。手足の長さ、柔軟性、筋力、得意な動作パターンなど個体差があります。
並進運動では大きく分けて、
軸足側にやや重心を寄せたまま軸足を使って押す方が得意なタイプ
地面を踏込脚(前に出す足)で身体を引っ張るイメージが合うタイプ
この二つに分けられます。
これを私は軸足重心型(軸足タイプ)と速度重視型(踏込脚タイプ)と呼んでいます。
ダルビッシュや大谷選手のような軸足重心型は膝が外側に残る傾向が強く千賀選手や前田選手のような速度重視型は内旋が強いくの字ステップとなります。
軸足重心型(大谷・ダル型)は筋トレで開花した選手に多いイメージですが、軸足のトリプルエクステンション(股関節、膝関節、足関節の爆発力)が直結する投げ方で、下半身の筋力を活かしやすい投球フォームです。2018年から2022年にかけて日本体育大学が5年連続でプロ野球選手を輩出しましたが、全投手とも軸足重心型でした。(コーチの影響かトレーニングの影響かは不明)
ヒップファーストの動作と相性が良く、軸足の膝が外を向く&股関節の屈曲が大きめな形が特徴です。
前田健太選手や千賀滉大選手のような、速度重視型は腰の向きが開く前に重心の推進が完了するため速い並進運動になりやすく、また、胴体を立てたまま捕手方向に進むので重心が無駄な軌道を描かずに推進でき、細身で筋力がない選手でも速い球を投げやすいと言えます。
くの字ステップと呼ばれる形の選手が大半で、また上体は正面から見た時に首が立つあるいは一塁側に倒れる形が特徴です。
速度重視型は股関節の大きな内旋可動域(女の子座りができる程度)が必要で、それがないと真っ直ぐに重心を捕手方向に運ぶことができません。また、股関節の内旋可動域は大腿骨頭がどう股関節についているかが大事となり、生まれ持った要素が大きく後から目指すには難しいと感じています。
このようなタイプ分けは極端な解釈をされやすいのですが、どちらかに無理やり当てはめる必要はありません。
どちらのタイプも共通しているのは、
軸足は外旋位(膝が地面を向かない)、踏込脚は内旋位(内に足を絞る)ことです。
軸足の膝を残すイメージが合うのか、踏込脚で引っ張るイメージが合うのか。
現在、日本人最強投手といえるであろう山本由伸選手はどちらかに分けるとすれば、速度重視型(千賀・マエケン型)と見ます。股関節の屈曲角度は浅く、前後の足幅が大きいです。
踏込脚着地の役割は急ブレーキ
デコピンでコインを回したことはあるでしょうか。
仮にデコピンの逆にコインが真っ直ぐ勢いよく指にぶつかったとしたら同じくコインは回ります。
投球動作の回旋運動の起こし方はこのイメージです。
並進運動で向かってきた身体を踏込脚でしっかり急ブレーキをかけることで踏込脚の股関節を支点にして「勝手に」回ります。むしろ足の着地までは体は回してはいけません。
横移動から着地し、着地の踏込脚の股関節がしっかり止まることで勝手に回転運動が始まる、それが正しい形です。よって、回転は右投手であれば左の股関節を支点に起こります。
デコピンでコインを回す場合は指で弾くイメージですが、投球動作の場合はコインが高速で向かってきたところにストッパーとして踏込脚があるイメージです。投球方向への推進力は並進運動で決まり、その推進力をどれだけ回転運動に繋げられるかは踏込脚のブレーキ力にかかっています。
また、押した方向に押した分だけ力が返ってくることを「作用・反作用の法則」と言いますが、踏込脚のストッパーを地面に対して鋭角につくことでより力の方向を自分に向けて上げることも大切です。が、これは過去の投手を見ても(例えばレジェンドのマダックス選手)着地した足がブレーキの役割を果たせてさえいれば、大きな問題にならないようです。
捻転差は結果だから意識でやると狂うよ
並進運動と回転運動に投球フォームは分けられることが多いですが、さらに回転運動には腰の回転による横回転と、胴体が前傾していく縦回転に分けられます。
投球フォームで大切なことは、投球するライン上で重心を素早く移動することと、それを投球方向と逆の向きに急ブレーキをかけてあげることです。投球の全体の流れで言えば、並進運動による横移動、急ブレーキによる腰の横回転、そして、ブレーキをかけ続けることによって生まれる縦回転(体の折りたたみ動作)と3つの動作に大きく分けることが出来ます。
回転運動の横回転と縦回転は順番としても、横➡︎縦の順に勝手に起こるべきで混ざってしまう選手はいわゆる「開きの早い」選手と言われます。この辺の話は次回の上半身編で説明しようと思います。
最後に捻転差という言葉について触れておこうと思いますが、この言葉ってイメージだけで変に世に浸透してるので優先順位の話をしておきます。今回は下半身のことをメインに投球フォームについて話をしてますが、胴体の向きは並進運動時は横向きで、踏込脚着地後に勝手に回転するという風に表現しました。この回転運動時の時間差が捻転差になります。
捻転差を決めるものは推進力とブレーキ力であるべきです。回転の力は二つの力の結果です。ですが、フォームの中で捻転差を作ろうとするのは、より捻ろうとするか、より残そうとするかといった、推進力とブレーキ力ではない部分にアプローチしがちです。
ライン上で重心を動かす重要性について強調して書いてましたが、それは速い球を投げるためだけでなく、制球力を高めるためにも重要です。捻転差を意識的に強めようとしてしまうと、このライン上で体を動かすことにも悪影響を及ぼします。
捻転差の優先順位は、地面をしっかり捉えると地面反力を貰うことに比べたら枝葉の部分に過ぎません。そもそも、その動作の精度が高くなれば勝手に捻転差は大きくなります。
先日、メディシンボールのトレーニングを各SNSにあげましたが、今日のフォームの記事を読んだ後に見ると、何を大事にしてるかがより分かる思います。投球フォームは自動プログラムのようなものなので、いきなり実際の投球フォームを変えようとするよりも、ドリルを通して力の発揮の仕方を体に覚えさせる方法がオススメです。
ぜひ試してみてください。
では、また。
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