こんにちは。トレーナーのMOTO(モト)です。
前半の【理論編】では、野球におけるウエイトトレーニングは「エンジン(素材)を大きくする作業」であり、一瞬で爆発的な出力を出す「RFD(瞬発力)」の重要性を中心に話をしました。
理論を頭に叩き込んだところで、ここからは「じゃあ、具体的にどんなメニューを、どんなスケジュールでやればいいの?」という実践的な内容を解説していきます。
グラウンドでの練習、学校生活、自主練習……ただでさえ忙しい野球部員が、限られた時間の中で最大の効果を出すための「合理的なプログラム」を解説します。
4. 野球部のためのコア種目(BIG3+懸垂)
筋肉を部位別に細かく鍛える時間は、我々野球人にはありません。特に学生野球の場合、部活動で負う疲労と両立させる必要があります。よって最優先すべきは、複数の関節を同時に、複雑に動かす「コンパウンド(多関節)種目」です。
コンパウンド種目を軸にすると、小さな筋肉も含めて全身の各筋肉群を効率よく増やすことができ、何より「大幅な時間の節約」になります。
プログラムの中心に据え、絶対に練習して正しいフォームを習得してほしい種目は以下の5種類です。
- スクワット 下半身の出力を高める絶対的王道。地面を強く鉛直に捉えるベースを作ります。必ず「ヒップヒンジ(後述)」を意識し、お尻を後ろに引きながら、股関節と背中でウエイトの重量をがっちり受け止める感覚を掴んでください。地面を「足の裏全体(特に踵から中足部)」で強く押し返す感覚が身につけば、マウンドでプレートを押す力や、打席でステップした軸足で地面を捉える強さが激変します。
- デッドリフト(床引き) 背面上部から下半身まで、身体の後ろ側のチェーン(ポステリア・チェーン)を総動員して床から重量を引き上げる、まさに「身体の強さ」の象徴です。
- ルーマニアンデッドリフト 野球の出力の要である「ヒップヒンジ(股関節を折り畳む動き)」を習得するための筋力や柔軟性を強化する最重要種目。走る、投げる、打つ、すべての土台となるのがこのヒンジ動作です。
- ベンチプレス 上半身の押し出す力を強化。胸骨に思い切りバウンドさせるような危険なやり方ではなく、セーフティバーを必ず設置し、コントロールされた正しいフォームで行うことが絶対条件です。ベンチプレスについては賛否があるのでこれはまた別の機会にも解説します。
- ミリタリープレス(立位のバーベルショルダープレス) バーベルを頭上へ爆発的に押し上げることで、肩周り(三角筋)や上背部だけでなく、挙上時に身体を一本の強固な柱にするための「強力な体幹の剛性(強さ)」を鍛えます。 野球の動作はすべて「立った状態」で行われます。ベンチプレスのようにシートに背中を預けないミリタリープレスは、下半身から生み出したパワーを体幹を通じて指先へと伝える「連動性」を高め、球速アップや肩関節のブレを抑えるケガ予防に直結する隠れた最重要種目です。
- 懸垂(チンニング) 投球やスイングの「ブレーキ(減速)」をかける際、肩甲骨周りや背中の筋肉が強くないとケガをします。加速だけでなく、身体を守るためにも背中の強化は必須です。
ヒップヒンジとは? 骨盤を後方に引きながら、股関節を軸に「引き出し」のように折り畳む動作のこと。 野球のパワーポジション(構えの姿勢)の基本であり、これができないとウエイトで腰を痛めるだけでなく、実際のプレーでも「膝主導」の力のない動きになってしまいます。
5. 【週2回で激変する】野球部特化型スケジュール
「毎日ジムに行けない」という選手でも問題ありません。ウエイトトレーニングは週2〜3回、高い集中力と正しいフォームで行えば初心者のうちは驚くほど筋力が伸びていきます。
グラウンドでの技術練習に影響を出さないための、具体的な2日間ルーティンがこちらです。
| 曜日 | メニュー(コア種目) | セット数の目安 | 狙い・効果 |
|---|---|---|---|
| DAY 1 | ・スクワット ・ルーマニアンデッドリフト ・ベンチプレス ・ミリタリープレス ・懸垂 ・体幹(プランクなど) | 各3〜5セット (メイン重量で8〜10回) | 股関節の伸展と、上下の連動性を高めるベース作りの日。 |
| DAY 2 | ・デッドリフト(床引き) ・フロントスクワット ・ベンチプレス ・ミリタリープレス ・懸垂 ・体幹(ゆりかごなど) | 各3〜5セット (メイン重量で5〜8回) | 床を爆発的に蹴る力(最大筋力)と、体幹の剛性を高める日。 |
重量や回数は個人差が大きいのでやってみて合わせてください。スクワット・デッドリフトは40kgから、プレス系はバーベルのみからをお勧めします。最も大事なことは正しいフォームで行うことです。
懸垂は自重を持ち上げるだけの筋力が必要なため、「まだ1回もできない」「3回くらいで限界がきてフォームが崩れる」という選手も多いかもしれません。
そんな選手には、適切な負荷に調節できる2つの「補助懸垂」をおすすめします。
- アプローチA:トレーニング用のゴムバンド(パワーバンド)を使う 鉄棒に太めのゴムバンドを引っ掛け、そこに片足(または両膝)を乗せて行います。ボトム(一番下にぶら下がった状態)でゴムの反発が最も強くなるため、背中の筋肉(広背筋)を使う感覚を掴みつつ懸垂の練習に最適です。
- アプローチB:ラックとバーベルで行う「膝つき懸垂(インバーテッドロウ進化系)」 パワーラックのセーフティバー、またはスクワットの高さくらいにバーベルをがっちり固定します。そのバーを握り、床に膝をついた状態(または足を前に伸ばして踵をつけた状態)で斜め、あるいは垂直に身体を引き上げます。足の着き方次第で「体重の何割を背中に乗せるか」を繊細にコントロールできるため、段階的に負荷を強くしていけます。
どちらのやり方でも、共通して意識してほしいのは「腕ではなく、胸をバーに近づけるように引き上げる」こと。そして、下ろすときも力を抜かずに「背中で重耐えながら(ネガティブ動作)ゆっくり下りる」ことです。
これなら、現時点で懸垂ができない選手でも確実に背中の筋肉に刺激を入れ、1〜2ヶ月後には補助なしできれいな懸垂ができるようになります。
⚠️超重要:筋トレに「野球の動き」を混ぜるな!
ここが多くの選手、そして指導者が勘違いしてしまうポイントです。 「ピッチングの瞬間の動きに似せて、ダンベルをひねりながら挙げる」といった、トレーニングに競技スキルを混ぜるような真似はしないでください。
変に動きを寄せようとすると、教科書通りのフォームから外れるため、扱える重量がガクッと落ちます。そうなれば、せっかくの筋肥大効果や筋力向上のための刺激に「ノイズ」が混ざり、フィジカルの底上げという本来の目的がブレてしまいます。
ウエイトトレーニングの時間は、中途半端なドリルに逃げず、「正しいフォームで最大筋力を高めること」に全集中してください。メディシンボール投げやシャドーピッチングなどの動きの練習は、負荷のない「スキル練習」の枠組みとして完全に切り分けて行いましょう。
※競技特異性を狙った考え方を全否定しているわけではなく、今回の記事の趣旨となる身体を純粋に強くする目的のトレーニングに混ぜないでくださいという意味です。
6. 慣れてきたら「補助種目」で弱点を補完する
最初の1〜2ヶ月は上記のコア種目だけで十分すぎるほどの刺激が入ります。しかし、ウエイトの重量が伸びて自分の「弱点」が見えてきたら、少しずつ補助種目を取り入れていきます。
ワークキャパシティ(こなせるトレーニング量)の向上に合わせて、以下の種目をDAY1・DAY2の最後、あるいは別日に1〜2種目プラスしてみてください。
- 下半身の補助: ブルガリアンスクワット、バックランジ(片脚ずつの出力・安定性を高める)
- 肩・背中の補助: ダンベルショルダープレス、ワンハンドロウ、キューバンプレス(肩甲骨・肩関節のインナー、アウターのバランス調整)
- 腕・胸の補助: ダンベルフライ、アームカール、ハンマーカール、スカルクラッシャー、プルオーバー
「自分のどこが弱点なのかわからない」「メニューのバランスがこれでいいか不安」という選手は、一人で悩む必要はありません。
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実践編のまとめ
- 忙しい野球部こそ、BIG3+懸垂の「コンパウンド種目」に絞って時短&効率化。
- 週2回のシンプルなプログラムを、高い集中力と正しいフォームでやり切る。
- ウエイト中に野球の動きを混ぜない。「素材作り」と「調理(技術)」を混ぜると、どちらも中途半端になる。
終わりに
ウエイトトレーニングは魔法ではありません。しかし、正しく積み上げたフィジカルは、あなたがグラウンドで技術を磨くための「最高の土台」になります。
大谷選手がマウンドでのスタミナ論を語れるのも、圧倒的な基礎筋力という入場門をくぐり終えているからです。まずは自分の現在地を冷静に見極め、圧倒的なエンジンを手に入れることから始めましょう。
現在、私の運営するパーソナルジム「STRETCH & STRENGTH」では、初回120分6,000円で直接指導が受けられます。
- 「スクワットやデッドリフトの正しいやり方をプロに教わりたい」
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では、また!
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⚾ MOTOについて(筆者プロフィール)
世田谷区でパーソナルジムSTRENGTH & STRETCH を経営しています。
トレーナー歴11年。ゴールドジム、Dr.ストレッチでの経験を活かし、
現在は自身もMAX145km/hの投手としてプレーしながら、
プロアスリートからジュニアまで幅広くサポートしています。
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