こんにちは。世田谷区奥沢でパーソナルジム「STRETCH & STRENGTH」を運営している、トレーナーのMOTO(モト)です。
私は普段、アスリートから高齢者の方まで幅広く指導していますが、同時に自分自身も150km/hの壁に挑戦し続けている現役の野球人でもあります。
SNSで発信をしていると全国の野球部員や指導者の方から、トレーニングに関する質問や悩みが絶えず寄せられます。
「毎日一生懸命筋トレしているのに、打球の飛距離が伸びない」 「体重は増えたのに、球速が上がるどころか肩を壊してしまった」
こうした悩みを抱える選手に話を聞くと、ほぼ100%の確率である共通点が見つかります。それは、「ウエイトトレーニングの目的と、野球の競技特性の結びつけ方を根本的な理解が足りない」ということです。
以前の記事でもお話しした通り、本気で身体を強くしたいのであれば、なんとなくの筋トレは今すぐ辞めなければなりません。
今回は、野球界に根深く残る「筋トレ不要論」に異議を唱えつつ、なぜ筋トレがパフォーマンスに繋がらない人がいるのか、その理由をわかりやすく論理的に解説します。
1. 「使える筋肉」と「使えない筋肉」という不毛な議論を終わらせる
野球界には、いまだに「ウエイトトレーニングでつけた筋肉は使えない」「動きが硬くなるからやらない方がいい」という盲目的な拒絶反応を示す人が多くいます。
結論から言います。「使えない筋肉」なんてものは、この世に存在しません。
そう言われてしまう原因は、筋肉そのものの質ではなく、「トレーニングの目的」の違いを理解していないことにあります。
- ボディメイク(フィジークなど): 目的は「外見(筋肉のサイズ)を大きくすること」。太くなる結果として、副次的に筋力が強くなる。
- アスリート(野球人など): 目的は「出力(筋力・身体能力)を強くすること」。強くなった結果として、副次的に身体が大きくなる。
YouTubeなどで活躍するマッチョなインフルエンサーたちの真似をして、ディテール(胸だけ、二頭筋だけなど)をピンポイントで追い込むような「アイソレーション(単関節)種目」ばかりを野球部がやるのは、完全に的外れです。彼らは外見の美しさを競うプロであり、一瞬で爆発的なパワーを発揮するプロではないからです。
要するにまずは目的があり、そのための方法がある…この順番が大切です。
よくある例え話として、「大谷翔平選手が今すぐ他の競技をやったら、プロ級に活躍できるか?」という問いがあります。 答えはノーです。どれだけ優れた肉体(素材)を持っていても、その競技のスキル練習(調理)をしなければ、身体を上手く動かせるはずがありません。
これは筋肉が「使えない」のではなく、単に「その競技の練習不足」なだけです。ウエイトトレーニングは、あくまで野球の技術を乗せるための「土台(素材)」を大きくする作業であることを、まずは頭に叩き込んでください。
アイソレーション種目とは? 関節を1つだけ動かして、特定の筋肉を鍛えるトレーニングのこと(例:ダンベルカールなど)。 筋肉を単体で大きくする「ボディメイク」には最適ですが、全身の連動性が求められる野球の動きにおいては、こればかりやりすぎると「筋肉はついたのに動きがバラバラになる」という落とし穴にハマる原因になります。
2. 野球人に絶対必要な「RFD(力の立ち上がり率)」とは?
ウエイトトレーニングを行うと、筋肥大と共に「最大筋力」が向上します。しかし、野球というスポーツで結果を出すためには、これだけでは不十分です。
競技パフォーマンスに決定的な差をつけるもの。それが「RFD(Rate of Force Development=力の立ち上がり率)」いわゆる瞬発力です。
これは「どれだけ短い時間で、一瞬にして爆発的な力を発揮できるか」という能力を指します。
- スクワットでゆっくり粘って200kgが挙がる能力(=最大筋力)
- マウンドや打席で、一瞬(コンマ数秒)の間に床を爆発的に蹴る能力(=RFD)
いくらジムで重いバーベルを持ち上げられても、このRFDが低ければ、ピッチングやバッティングの瞬間にその力を還元することはできません。実際、十分な筋肉量を獲得して最大筋力を伸ばすだけでもRFDは高まりますが、その能力を伸ばすだけでは競技力はいずれ頭打ち(収穫逓減)を迎えます。
だからこそアスリートには、全身を連動させて爆発的に挙上する「コンパウンド(多関節)種目」を軸にし、身体の連動性と出力を高めるプログラムが必要不可欠なのです。土台としてのフィジカルを向上させる努力と、身体を思ったように動かす技術は別個で考える必要があります。
RFD(力の立ち上がり率)とは? 簡単に言うと「一瞬でゼロから100%の力を爆発させる能力」のこと。 スピードとパワーが求められる野球では、ゆっくり時間をかけて重いものを挙げる力(最大筋力)だけでなく、ピッチングのリリースやバッティングのインパクトの「一瞬(コンマ数秒)」にすべての出力を集約させるこのRFDが、球速や飛距離に直結します。
収穫逓減(しゅうかくていげん)とは? 経済学の用語ですが、トレーニング科学でも同じニュアンスで使えます。要するに「レベルが上がるほど、同じ努力をしても伸び率が鈍くなっていく現象」のことです。 初心者の頃は何をやってもグングン伸びますが、筋力が上がれば上がるほど、さらに上のレベルに行くためにはメニューの質やプログラムの専門性を高める必要が出てきます。
3. 大谷翔平の言葉から学ぶ、トレーニングの現在地
2026年2月。3年ぶりの本格的な二刀流復活を目前に控えたドジャースの大谷翔平選手が、キャンプ地で非常に興味深い「持論」を口にしました。
「投げるスタミナは投げるしかない。それは走るとか、なにか重いものを上げるとかそういうことではない」
この発言を額面通りに受け取った人たちが、「やっぱり走り込みやウエイトは意味がないんだ」と安易なトレーニング不要論を唱え始めましたが、それは大きな誤解です。
30代を迎え、歴史的なシーズンに挑み続けている彼の言葉の裏にはもっとハイレベルな前提条件があります。
大谷選手はすでに、ヘックスバーのデッドリフトで260kgを軽く持ち上げるなど圧倒的なベースとなるフィジカル(=最高の素材)をジムで育て終えています。つまり、「基礎体力という名の入場門」を完全にくぐり抜けた人間だからこそ言えるセリフなのです。
最大出力が「100」の投手と、「120」の投手が、同じ150km/hのボールを投げるとしましょう。
- 出力100の投手: 常に100%の全力投球(燃費が悪い)
- 出力120の投手: 8割強の「余力」を持った投球(燃費が良い)
この「1球あたりの余力」こそが、試合終盤まで球威を維持するスタミナの正体であり、その余力(エンジンの排気量)を作るのがウエイトトレーニングという「積立投資」です。
もし君が「試合の後半でバテるから」という理由で、思考停止して走り込みばかりしているなら、一度胸に手を当てて考えてみてください。 そのスタミナ不足の正体は、本当に「持久力不足」ですか?
- 原因①:筋力不足(エンジンが小さいため、1球ごとの肉体的消耗が激しい)
- 原因②:技術不足(股関節のヒンジが使えていない、腹圧が抜けているなど、動作のエラーによってエネルギーが指先やバットに伝わる前に漏れている)
土台となる筋力(エンジン)がない状態でいくら走っても、マウンドでのガス欠は絶対に解消しません。
前半のまとめ
- ウエイトトレーニングは「エンジン(素材)」を大きくする作業。スキル練習は「運転技術(調理)」。役割を完全に切り分けるべし。
- 野球に必要なのは、一瞬で出力を最大化する「RFD(瞬発力)」。部分的な筋肥大ではなく、全身の連動性を意識せよ。
- トップ選手がウエイトをやるのは、1球あたりの「余力(燃費)」を作り、パフォーマンスの天井を引き上げるためである。
自分の現在地を冷静に見極めたとき、君に足りないのは「ガソリン」ですか? それとも「エンジン(筋力)」ですか?
次回は、この理論を踏まえた上で、忙しい野球部員が今日からグラウンドやジムで実践すべき「超・合理的ウエイトトレーニングプログラム(実践編)」を具体的に解説します。
(※後半の実践編へ続く)
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では、また!
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⚾ MOTOについて(筆者プロフィール)
世田谷区でパーソナルジムSTRENGTH & STRETCH を経営しています。
トレーナー歴11年。ゴールドジム、Dr.ストレッチでの経験を活かし、
現在は自身もMAX145km/hの投手としてプレーしながら、
プロアスリートからジュニアまで幅広くサポートしています。
SNS総フォロワーは5万人超。 野球・トレーニング情報を届けています。
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